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2 俺、猫だけど質問ある?
俺、猫。名前はまだない。ビルのコンクリートの割れ目で、腹が減って鳴いて鳴いて、声が出なくなって、もうお終いだと思ったあたりから猫生がはじまった。
親には会ったことがない。ウラセサンが柔らかいキャットフードをくれた時には、4匹いた兄弟で残ったのは俺と弟だけだった。
最初にウラセサンを見たときは、毛の無いしわくちゃの顔に獲って喰われるかと思ったが、あとで、それが古くなった人間だと知った。他の人間達と比べて、ウラセサンは小さくてよぼよぼだ。とても親切で、毎日キャットフードをくれる。
俺たちの根城は隣近所の猫のなわばりの隙間だったから、静かにしていれば他猫と面倒にならなかった。まあ、見逃してくれていたんだといまは分かる。
それから兄弟寄り添ってなんとか生き延びてきた。つまり野良だ。だから名前は一生ないだろう。最期だって、暗くて寂しい所で死ぬに決まっている。
この冬、でかい茶白がいなくなった。
広い庭に平屋と2階屋のある家と、木がたくさん生えた庭のある白い家と、それから12階建てのボロボロのビルの北側が茶白のなわばりで、俺たちの根城はそのビルのタンク置き場の隅だった。
それで俺たちは茶白がいなくなったことに一番に気づいて、すぐにスプレーしてまわった。スプレーってのは縄張りを主張するときに出る臭いの強い小便だ。ほどなく勘づいてやってきた近所の猫たちと喧嘩になったが、俺はその時、自分が大きな黒猫で結構強いってことを知った。それまでは弟がチビなんだと思っていたが、どうやら俺がでかかったらしい。
欠けた左耳と曲がった尻尾と引き替えに、俺たち兄弟は茶白の縄張りを手に入れた。
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