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3 ワナビとその家族
俺たち兄弟のなわばりにある、広い庭に建つ平屋と2階屋は物凄く古い。木造で、あちこちに隙間があって、天井も床下も入り放題だ。
スカスカのブロック塀には爪がよく掛かって、平らな道みたいに走れる。塀の内側ぐるりは木蓮で、大きめの鉢植えがずらりと並べてある。花壇や鉢植えは、毎日、オカアサンが手入れをしている。だから土はいつも、ふかふかだ。掘り返し放題、土かけ放題。つまり、この家は俺たち兄弟の便所だ。
ひと月ほど前、ようやく暖かくなってきて、屋根の上の昼寝が心地よくなってきた頃のことだ。2階屋に人間が集まっていた。人間たちは箱をたくさん運び込み、ロープでベッドを2階に上げたり、1日中、なにやら作業をしていた。
その日から、ワナビがこの2階屋に住み着いた。もちろん、俺たち兄弟には、なんの断りもない。
ワナビという名は、その人間の雄が自分で言ったから分かった。
ワナビが住み着いて数日後の夜のことだ。
「よう、毎日そこにいるな。ちょっと話聞いてくれよ」と、2階屋のベランダの洗濯機の上で休む俺に、ワナビが話しかけてきた。
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