3 ワナビとその家族

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 オカアサンだ。オカアサンの髪は真っ白で、木洩れ日にキラキラと光る。カタツムリみたいな恰好で歩く。ウラセサンよりもよぼよぼで、よくこれで生きているなと感心するほどだ。よく笑っているので、それがいいのかもしれない。俺もこれからは余計に笑うことにするか。にゃー。  俺は急いでプランターから出て、弟の待つ塀の上へ駆け上がった。ああ畜生、まだ大便が全部隠れていないじゃないか。 「いたずらじゃないよ、うんちしたんだ。猫は砂漠の生き物だから柔らかい土に排泄して隠す習性があるんだよ」と、オカアサンの後からやってきたワナビが言った。 「昨日も桜草がひっくり返されて可哀相だよ」 「使ってない植木鉢とかお皿を逆さに置いとけば掘れないから何もしないよ。それで、こっちのトイレにしてくれればOK」 「あんたが片付けるの? 公衆トイレの管理人だね」とオカアサンが言って、ワナビと2人で笑った。  そこへ、「お母さん、電話鳴ってるよ」と平屋の方から別の女性の声がした。あれはヨーコサンだ。 「あれ、スマホ置いてきちゃったよ。はいはい」と言って、オカアサンは砂利道を平屋の方へ行った。足もまだまだ丈夫そうだ。 「こっちがトイレだからな」と、ワナビが俺たちを見上げて言って、プランターを指差した。俺は無視してやった。  それから数日後の夜。俺は平屋の天井裏で休んでいた。するとワナビがやって来て、キヨシサンと話しはじめた。俺の見たところ、このキヨシサンという雄がこの家族のボスだ。     
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