そのシャッターを切る時

2/5
前へ
/5ページ
次へ
 Aさんは俺と同じ写真部で同じクラス。  よく写真を撮ってまじめに活動している彼女に対して、俺は幽霊部員だ。  年に3回しかない学内展示用の写真は、いつも家の近所の空を撮って済ませていた。そのくらい俺は適当にやっていた。  先日、クラスでいつもおとなしいAさんは、同じくクラスで目立たない俺に突然話しかけてきた。  A「Bくん、学内展示の写真、もう撮った?」  B「え、まだだけど」  普段ほとんど話さない彼女に話しかけられて、俺は動揺した。  A「また空の写真を撮るの?」  B「うん。空、好きだし」  別に嘘じゃない。空は見ていて飽きない。それにだいたい絵になるから無難だ。  それよりも、なぜAさんが突然そんなことを聞いてきたのかが気になる。  B「なんでそんなこと聞いたの?」  A「えっと……ほら、次の学内展示が終わったら引退でしょ? 最後だから何を撮るのかなって」  幽霊部員の俺からすれば、最後だとかも考えていなかった。  A「あとね、Bくんが空以外で撮ったのも見てみたいなって。空の写真も、私はとても好きなんだけど」  B「空以外で……」     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加