そのシャッターを切る時

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 そもそも俺は、部活が強制であるこの高校で帰宅部になるために写真部を選んだ。まじめに写真を撮ったことは一度も無い。というか、センスが無い。  B「空以外はなかなかいいのが撮れなくて。Aさんはいつも良い写真撮るよね。コツを教えてほしいくらい」  A「そ、そんなことないよ」  彼女の顔が少し赤くなった。  Aさんが撮る写真は確かに良かった。それは景色や家の中だったり、人や生き物と様々だ。そしていつも、なんか見てしまう。廊下を歩いていた俺の目には留まるのだ。  B「いつもどういう基準で撮ってるの?」  単なる興味で聞いてみた。  A「基準ていうのは自分でもよくわからないんだけど、気がついたらカメラを構えちゃってるんだよね。なんていうか、今撮らなきゃって。この瞬間を何かに閉じ込めたい、って言うのかな」  B「閉じ込めたい?」  俺がよくわからないという顔をしていたのか、彼女は慌てた。  A[ごめんっ。変な話だよね? なんの参考にもならないよね」  B「そんなことは、ないけど」  俺もあながち否定はできず、彼女をションボリさせてしまった。  それがあったからなのか、3月が終わる頃の雪が降った日、Aさんから写真を撮りに公園に行こうと誘われた。  俺は4月の学内展示用にとっくに空の写真を撮ったのだが、少し気になってしまった。
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