冷凍睡眠からの覚醒

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冷凍睡眠からの覚醒

「真理ちゃんの将来の夢は?」 私は小さい頃からそう聞かれると必ずこう答えていた。 「私は宇宙飛行士になるんだ!」 私がこう言うといつも馬鹿にする男の子が居た。 「真理は女だから宇宙飛行士なんかなれない。なるのは俺だ!」 彼は小池亮太。私の幼馴染だ。 彼はこう言って私をいつも苛めていた。 でも宇宙飛行士のこと以外では、 亮太は、いつでも私を守ってくれる頼れる相棒だった。 「真理は絶対、俺が守るんだ!」 亮太のこの言葉にいつも私はときめいていた。 私達は中学、高校、大学と同じ学校に通った。 そして、私が先に宇宙飛行士候補生に選抜された。 その時、亮太は本当に悔しそうな顔をしたが、 「直ぐに真理に追いつく。待っていてくれ!」と高らかに宣言した。 そして、翌年、彼は宣言通り宇宙飛行士候補生に選抜された。 彼は私の後ろを確かに追いかけていた。 私の最初ミッションは木星圏への初めての宇宙飛行だった。 宇宙船の名前はペガサス。 初の木星圏探査ミッションを持ったこの最新式の宇宙船は、 昔のスペースシャトルを一回り程大きくした形をしており乗員は3名。 衛星着陸船アポロンをペイロードベイに格納した機体は全長40メートルにも及ぶ。 今回のミッションは木星の衛星、イオ、エウロパ、ガニメデに着陸して様々な調査を行い、往復二年半をかけて地球に戻ってくる壮大なものだった。 このミッションでは木星への往復時間を金星と地球のスイングバイを使って短縮するものの、片道一年以上を要するものだった。 この為、酸素や食料を節約する必要から、殆どの航路を冷凍睡眠で過ごす事になる。 ミッションは既に木星の衛星探査を終え、帰還シーケンスに入っていた。
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