ナナカマド

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ナナカマド

俺の幼馴染は少し変わってる。 女のくせに、昔から時間にルーズで遅刻が多い。 理由なんて毎回くっだらないことばかりで、蟻の行列を見ていた、とか、カラスとずっと睨み合ってた、とかそんな事ばっか。 で、今回も……。 誘っておきながら、待ち合わせに中々来ない彼女。 スマホに電話を掛けるも出ないし。 くそ、何のための携帯だよ。 仕方なく彼女を探すために待ち合わせ場所から彼女の家まで歩いて戻る。 こんなことなら最初から家に迎えに行くんだった。 ちなみに彼女の家は俺の家の三軒隣。 待ち合わせにしたいと言ったのは彼女の方なのに。 何なんだよ、この無駄な時間。 五百メートル程戻ったところで足が止まる。 ……。 彼女だ。 何やってんだ?あんなとこで……。 赤い木の実がなる下でファインダーを覗いてる。 「おい絢香、お前おせぇよ」 近付いて声を掛ける。 「……」 「おい、絢香って!」 「あ、貴文。え、何?」 「何って、お前……。これから俺ら出掛けるんじゃ無かったか?」 「ああ、忘れてた。ごめん、もう少し待って」 「は?何だよそれ。お前が言い出したんだろ?今日映画見に行きたいって」 「あー、そうだっけ。でも、ごめん。今は無理」 「……何だよそれ」 「いいから黙って」 高校入学と同時に写真部に入った彼女。 興味のあるものなら何時間でもその姿を追い続けられる。 そんなだから、今まで何度か賞を取った事もある。 はぁ……。 さて、今回はどの位待たされるのだろうか。
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