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外は雨が降り始めていた。
雨で髪や服が濡れていくのがわかる。
「あっ!」
私は脇目も振らず走り続け、何かにつまづき転ぶ。
立ち上がろうとすると、足首に痛みが走った。
「いたっ」
足を痛めてしまったようだった。近くにあった大木まで足を引きずりながら歩き、根元に腰をおろした。
「どうしよう」
正志に感情的に言葉をぶつけて家を飛び出すなんて、親と喧嘩して家出をする子どものようだ。もう少しちゃんと話して彼の言葉を待てば、彼も理由を打ち明けてくれたかもしれない。
「なんで、こうなっちゃったんだろう」
瞳から涙があふれてくる。
彼の前だとなぜか冷静でいられない。
「もう、こんな私なんて嫌いになって当然だよね…」
「嫌いになる訳ないだろ!」
声が聞こえたと思った瞬間、後ろから強く抱きしめられた。
「…正志?」
「独り占めしたくてどうしようもないほど、愛しているんだよ。仕事にだって、真由との時間を渡したくないんだ!」
「きゃっ!」
ぎゅっとさらに強く抱きしめると、彼は乱暴に私を抱き抱える。
「教えるよ。なんで寝ている間に真由を連れ出すのかを」
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