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背後の宙太郎がいっそう身を固くする気配を感じた。宙太郎が知られたくなかったのはこのことだったかと伍火は悟った。
「そうとも。少しは陰陽師になって妖怪を退治したいと思ってくれたかな?」
「コイツは、宙太郎は悪いことをしているわけじゃない」
「今はね……だが、いつ暴発するかわからない地雷は撤去するのが当たり前だろう?」
伍火は宙太郎を振り返る。宙太郎は今にも泣きそうな表情で伍火を見つめ、静かに項垂れた。伍火は何か言ってやりたかったが、言葉が見つからなかった。
「……まぁ、今日はただの挨拶に来ただけのつもりだったが……」
明人は唐突に戦闘態勢に入った。
「やめろ! 宙太郎は悪いヤツじゃない!」
「九尾の狐ももちろん退治したいが、今はそこの怪異が先だな!」
振り返り明人が攻撃を仕掛ける。その先に昨日の昼間に見た隙間にいた異形がいた。
ヒトの形をしているが人の言葉を発することはなく、のどの奥からうめくような、低い、動物のような音を出していた。しかも一人ではなく幾人ものうめき声だ。
「こ、コイツは昨日の!」
「知っているのだな。こやつの目を見たか?」
「ああ、穴だけしか開いてないのに、ずっとこちらを見ていた」
「ふん、間抜けめ」
「どういうことだ」
「伍火を認知しちゃったんだ」
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