Chapter3

11/20
前へ
/75ページ
次へ
 目標が同じであるはずが二人とも協力しようという気持ちにはなれないらしい。そうしているうちに騒ぎに気づいた幸夫が階下から上がってきた。二葉と明人がドタバタしているところに幸夫がひょっこりと顔を出した。 「何をそんなに騒いでおるんじゃ?」 「じいさん!」 「なんと! メミエズか!」  異形をメミエズと呼ぶ幸夫。明人の集中力が切れ、技の効力が薄れる。メミエズが幸夫に襲い掛かる。  幸夫は間一髪でよけたが後ろにひっくり返ってしまい、腰を強打してしまった。 「じいさん!」 「わしは大丈夫じゃ、アイタタタ」  今度は伍火に襲い掛かかる。宙太郎が前に出て伍火をかばった。黒い霧の一部が(むち)のような形態に変化する。それが瞬時に飛び出し宙太郎の背中を何度も打った。 「ウッ――!」 「宙太郎!」  宙太郎の苦痛に歪む顔を間近にして自分が何もできないことが悔しい。何か手立てはないものかと、伍火は考えあぐねた。  明人が再度メミエズを捕縛することに成功した。宙太郎を守りたい二葉がトドメを刺そうとしたが、宙太郎が声をかけて止めてしまう。その隙をついて異形は逃げてしまった。 「やはり妖怪は妖怪だな」  伍火は宙太郎の判断が間違っているとは思わなかった。 「身内の者が傷つけられたというのに楽天的なものだ」 「ワシのはただのぎっくり腰じゃ」     
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加