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声を張り上げるも痛みに耐えきれず、幸夫は腰を曲げた。伍火は幸夫の傍に駆け付け、肩を貸してやった。宙太郎も二人の傍に寄り、反対側の肩を支えた。やはり宙太郎は困った人にすぐ手を貸してやることができるヤツだと、伍火は内心うれしく思った。
「おまえの傍にいるその九尾もいつかは暴走して人間を傷つける」
「僕は伍火を傷つけることなんて絶対にしないもん!」
「そいつが暴走したらおまえらは一緒に居ることができるのか」
明人は伍火を挑発するように尋ねてくる。伍火は何も答えなかった、いや、答えたくなかった。
「おまえは自分の意志を貫こうとするほど、陰陽師として学ばなければならなくなるだろう」
「どういうことだ?」
「妖怪専門の薬師とはつまり陰陽師のことだからさ。陰陽師には元来、薬師としての側面がある」
二人の話を聞いていた幸夫が腰の痛みをおして口を挟んだ。
「昔は陰陽寮という専門の組織があってな」
「いまでいう組合だな」
「その組織の中に薬師部門があったのだ。妖怪の毒にあてられ治療する部門じゃな」
「ではオレが薬師として学ぶためにはまず陰陽師として学びを始めなければならないということか」
「そういうことだ。ふぅ、自己紹介と軽い勧誘だけのつもりが労働してしまった。まったく勤労すぎる自分が憎いよ」
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