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そんな伍火のツッコミは二葉に届くことはなく、窓から吹き込んできた冷たい秋風に、かき消されていった。
伍火は散らかった自分の部屋をしばし眺める。
妖怪と陰陽師とは、まるで漫画の世界だと思った。自分の実家が妖怪相手の調剤をやっていることだけでも驚きなのに、今日だけで伍火の許容を超えそうな情報量だ。軽く頭痛をおぼえる。
「頭が痛い……」
「大丈夫?」
「ああ、少し疲れただけ……」
伍火を気遣う声の主の方を向く。幸夫の隣にに先ほど持ち帰りされたはずの宙太郎が立っていた。変わらず幸夫を支えてやっている。
「おまえ、帰ったんじゃないのか?」
「うん、帰ったよ。帰ったのは僕の妖術で作った分身だけど」
「ぶん、しん……?」
「へへ、よくできてたでしょう!」
「そんなにしてまでここに居たいのか……」
「もちろん!」
宙太郎は大きく頷いた。
「でも祖父さんも腰を痛めて……」
そんな風に言えば宙太郎は諦めると踏んだが、幸夫はあっさりと宙太郎の滞在を承諾した。幸夫も宙太郎に甘すぎるのではないかと指摘したが「絹代ちゃんだったら宙太郎を手助けしてやったはずじゃ」と言われてしまい、反対することができなかった。
「……宙太郎」
「帰らないよ」
「そうじゃない。お前も手当が必要だろう?」
「少しだけ、ね」
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