Chapter3

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「それでもいいんだ、僕は」  そう言って宙太郎は布団の中へと潜ってしまった。伍火はそれ以上追うことができなかった。  しばらくすると、小さな寝息が聞こえ始めた。伍火は全く寝入ることができずにいたので、先ほど絹代のノートを読むことにした。  その(いち)と書かれたノートの表紙をめくる。何歳の祖母がこれを書いたのかはわからない。伍火の知っている老長けた達筆ではないことから、随分若い時に書いたものだということがわかる。なんとなく自分の書く字に似ているかもしれない。  最初のページは注意書きから始まっていた。そこにはこう書かれてある。 ――このノートを開くことができたあなたは、黒神の血筋であり陰陽師としての才覚を持った人間です。ノートを読み終える頃には陰陽師としての技を、すっかり習得できるでしょう。 「インチキ啓蒙書みたいな冒頭だな」  クスリと笑いながらも伍火は読み進めることをやめなかった。久しぶりに祖母と会話をしているような、そんな気分にさせられた。注意書きを読み終える。その先は、祖母の体験が日記のようにつづられていた。全く陰陽師の力を使えなかった幼少期から、陰陽師の力を継ぐことになった日や、初めてその力を使った時のこと。     
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