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宙太郎の声援が耳に届く。桐宮がディフェンダーを右に左に交わし、手薄になったスペースに飛び込んだ。シュートの体勢に入った瞬間、伍火もキャッチの構えに入る。キックのインパクトを見逃さないように足元を見ていた。
しかし、伍火は急に棒立ちになった。なぜなら桐宮のキックしたボールが、ゴールポストの枠を大きく外れることが簡単に予見できたからだ。
「桐宮、どうした?」
伍火が予想した通り、ボールは大きな放物線を描き出鱈目な方向へ飛んでいく。
「こんな……」
明人はあ然としていた。しかしそれはゴールを外したからではない。二人の足元に伸びた大きな影に気づいたからだ。伍火も慌てて上空を見上げる。
「雲? いや違う!」
コートの半分以上あろうかという大きさの蛇が上空をのたくっていた。正確にいうと蛇のようなものだ。竹のオモチャのように節目で接がれた蛇が上空からこちらにゆっくりと向かってきている。
「おい、桐宮! コイツは何だ!」
「メミエズ……一晩でこんなに成長するものか?」
「メミエズって昨日の?」
「ああ、そうだ。一晩でこんなに肥大するとは……」
周囲を見渡すと、他のクラスメイトたちは気づいていない。動きの止まった伍火と桐宮を何事かと見ている。
「他の奴らは見えてないのか?」
「異形は普通の人間には見ることができないよ」
伍火の所に宙太郎が駆けつける。
「先生~!」
そして片手を挙げて大きな声を出した。
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