Chapter4

3/9
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「伍火くんが、お腹が痛いみたいなので保健室に連れていってきます!」 「いや、オレは腹痛なんか」 「桐宮くん、手伝って!」 「あ、ああ、そうだな。ややっ! これは大変具合が悪そうだ!」  普段あんなに芝居がかった口調なのに、こんな時だけ棒読みの明人に呆れつつも、伍火は体調不良を装った。 「すみません、先生。保健室に行ってきます」  宙太郎と桐宮に引っ張られながら伍火はコートから退場した。そして三人はコートから出て誰も居ない校舎裏に身を潜めた。 「メミエズ、だっけ? 何か悪さしようとしてるんじゃないのか?」 「今のところその兆候はないが、飲み込まれたら確実に死ぬ。退治しなければならない」  死なんて不吉な単語を言ってのけた明人の表情も強張っている。 「でもあんな大きいものどうやって」  九尾の狐である宙太郎もその大きさに慄いている。 「結界でも作って閉じ込めることができたなら」 「ねぇ、お前は作れないの?」 「妖怪にお前呼ばわりされたくないな」  隣でいがみ合う二人をよそに、伍火は昨夜呼んだ祖母の日記を思い出していた。 「結界……」  確か昨日呼んだ祖母の日記には結界を張って、その中で妖怪を退治した話が書かれてあった。     
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!