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「伍火くんが、お腹が痛いみたいなので保健室に連れていってきます!」
「いや、オレは腹痛なんか」
「桐宮くん、手伝って!」
「あ、ああ、そうだな。ややっ! これは大変具合が悪そうだ!」
普段あんなに芝居がかった口調なのに、こんな時だけ棒読みの明人に呆れつつも、伍火は体調不良を装った。
「すみません、先生。保健室に行ってきます」
宙太郎と桐宮に引っ張られながら伍火はコートから退場した。そして三人はコートから出て誰も居ない校舎裏に身を潜めた。
「メミエズ、だっけ? 何か悪さしようとしてるんじゃないのか?」
「今のところその兆候はないが、飲み込まれたら確実に死ぬ。退治しなければならない」
死なんて不吉な単語を言ってのけた明人の表情も強張っている。
「でもあんな大きいものどうやって」
九尾の狐である宙太郎もその大きさに慄いている。
「結界でも作って閉じ込めることができたなら」
「ねぇ、お前は作れないの?」
「妖怪にお前呼ばわりされたくないな」
隣でいがみ合う二人をよそに、伍火は昨夜呼んだ祖母の日記を思い出していた。
「結界……」
確か昨日呼んだ祖母の日記には結界を張って、その中で妖怪を退治した話が書かれてあった。
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