Chapter3

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Chapter3

 口移しで薬を飲ませて欲しいとは、キスをして欲しいと同義だ。宙太郎はいま、伍火にキスをして欲しいとせがんでいる。伍火は自分の動揺を隠しつつ、一応、もう一度だけ尋ねてみた。 「おまえ、本気で言ってるのか?」 「うん」 「正気か?」 「うん」 「まだ意識が朦朧としてるとかものすご~く具合が悪いとかじゃないのか?」 「ううん、意識はハッキリしてる」 「そうか……ハッキリしてるか……」  伍火はユラリと立ち上がり、宙太郎の傍へ寄った。伍火だって男だ。色事に全く興味がないとは言わない。むしろ健全な男子として、興味がある。男なら据え膳喰わぬは恥だと、彼の申し出を受け、唇を奪ってもいいかもしれない。だが、相手も男の場合は事情が変わってくる。 「だったら薬は自分で飲め!」  そう言って宙太郎の額をデコピンした。  宙太郎が自分のことを好いてくれているらしいことは伝わってくる。容姿もかわいい。性格がよいのもとうの昔に存じている。今の時代、男同士の恋愛というルートがあるということも知っている。けれど伍火の宙太郎に対する気持ちはまだ曖昧なままだ。なにしろ、伍火は恋を知らないのだから。 「いった~い!」     
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