秘めること2.

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 趙飛燕は趙姫(ちょうき)と称される、水の国の魔妖の王の娘だ。  后が人であったが、趙飛燕はどちらかといえば魔妖の属性の方が強かった。   ――月が真円を描く晩に、便りを送るよ。  まだ深みのない、けれど優しい声を思い出す。 「……忙しいのかな」  思い出されるのは、その笑顔。  自分より少し年下の、顔も動作もとてもかわいい人。  時々見せる『可愛い』とはまた違う『男性』の表情に、いつも自分の心は振り回される。  今ですら動揺を隠せないというのに、彼が大人になったらどうなってしまうんだろう。  楽しみな反面、こわいと思う自分がいて。  趙飛燕は小さく溜息をついた。  便りがいつもより遅い。  ただそれだけで不安になる自分を、初めて知った。  彼は……。  縛魔師だ。  しかも、彼の北の国で、一番強い術力の持ち主だ。  優しいその声も、害を成す魔妖ならば、なぎ払う刃へと変わる。  彼の存在を知ってから、月が嫌いになった。  その身体の中に秘めた毅いひかりと、喰らうことに対して優しく包み込んでくれる、そんな彼の本質が月のようだったから。  不安になる。  我慢をしてるんじゃないか。  想い、想われる人は。  彼と同じ『人』の方がよかったんじゃないのか。     
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