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いつもの部活動
「面白いと思わないか?」
写真部の部活動中、校庭の大木の前。
冬特有の真っ白い息を吐きながら、先輩は呟く。
「何がですか?」
「ワタシのカメラと君のカメラ、そしてワタシの眼鏡。それぞれ違ったレンズがある」
「ええ」
「ということはだ。各々にワタシと君の像が映る」
「そうですね」
「此処には何人ものワタシと君がいることになる」
「まあ、理論上はそうなりますね」
「そこで、だ。レンズの中のキミとワタシが一人一人、異なる動きをしたら面白いと思わないか?」
「えぇー....むしろ怖いんですけど」
「むぅ....観察のし甲斐があるし、写真を撮れば賞を総なめすること間違いなしだと思ったんだが」
「心霊やオカルト写真としてなら受賞間違いなしでしょうね」
「そうだろうそうだろう!」
「あ、そこ喜ぶんですね」
とりとめのない会話。
けれど僕はこの時間が、好きだ。
そして先輩の事も....好きだ。
(先輩と僕が何人もいる状況....か)
仮にそのような状況になるのは御免被りたい。
(何人もいる先輩、一人も、違う僕にとられたくないからな)
などとまた下らないことを考えながら。僕はシャッターを押す。
「先輩、撮りますよ――――」
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