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地獄の灰......
生き残った人類は、この雪の事をそう呼んだ。
兼ねてから続いていた権力争いに何の前触れも無く、終止符がうたれた。
――2052年、黒いイブの日と語り継がれたその日に、全人類は約三割を残して死滅した。
12月24日、その日はちょうど、僕達がデートした日だった。
下校途中に見つけた景色の綺麗な公園へ行こうと、小高い丘の上にある公園に着いた。
僕は彼女が前から欲しがっていたデジカメをプレゼントした。
まさかのサプライズに映子が驚きプレゼントを受け取った瞬間だった――
海は枯れ、地は裂け、緑などは記憶の中にしか無くなった。核ミサイルの撃ち合いとなった後の地球上では、権力の為に失った物の大きさに後悔しか残らなかった。
虚しくもあざ笑うかのように何十年も、この地獄の灰と呼ばれる雪に似た灰が降り続いていた。
A 「ありがと、ずっと大好きだよ」
B 「......俺も」
あの日、目が焼ける程の光と爆風に掻き消された言葉を、僕はやっと聞けた。
――了――
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