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聞きたかった言葉
A 「あー、やっぱりスマホのカメラ機能よりも、ぜんっ全違うわ」
シャッターを切る音が静まり返ったこの場所に響いた。
終業式の帰り、久しぶりの下校デートも相成り、いつになく浮かれた気分だった。
真新しいカメラを手に白い雪が舞う中、健気に咲く花や蕾を夢中でカメラに収める映子。
転校生だった僕は雪というものを見た事がなかった、見上げた空から無数に落ちる雪を手のひらに取る。
広げたままの手のひらに積もる雪。
B 「いい加減こっちも撮ってよ......」
嫉妬、そんな感情が、銀世界ばかり撮る映子に湧いた。
顔を上げた彼女と目が合った。
小さく言ったつもりだったが、聞こえていたのだろうか、戸惑う僕に面倒くさそうに目を細め、カメラを覗く事なくシャッターを切る、嫉妬したのがバレたのか、そんな表情にも見えた。
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