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別れ
とある夫婦がいた。
その夫婦はそれはそれは深く愛し合っていた。が、それももう遠い昔の話。今や妻は不倫に溺れ、夫を邪魔だと感じていた。
やがて妻は夫を殺す計画を立てた。
夫に大量の酒を飲ませて酩酊状態にし、深夜の道路に放置する。そうすれば事故に見せかけて夫を殺す事が出来る。完璧な計画だった。
四日前の深夜。
酒を大量摂取させた夫を道路の真ん中に寝かせ、そのまま去ろうとしたその時。
早速、トラックが現れた。深夜で交通量が少ないというのにこんなに早くチャンスが来るなんて、珍しい事だ。
妻は歩道の木の陰に隠れ、その様子を窺う事にした。さっさと逃げるつもりだったのだが、早々にやって来たチャンスに興奮していたのだ。
だが、それがいけなかった。
トラック運転手は寸でのところで道路上に横たわる人間の存在に気が付いてしまったらしい。慌ててハンドルを切り、トラックは歩道に突っ込んでしまったのだ。
まさかそこにもうひとり人間がいたなんて、想像もつかなかったのだろう。
程なくして、二人は救急搬送された。妻はトラックに跳ねられて重症。夫には怪我はなかったが、酩酊状態で仰向けに寝かされたせいで、嘔吐物が喉に詰まり窒息していた。意識不明の重体だった。
さ迷える二人の魂は早速、死神に目を付けられる。
美味しそうな若い魂、二人とも食べてしまおう。
そんな死神の足音に気付いた老婆は、二人を屋敷に避難させた。
魂の選別をする為に。
『お父さん……!』
目を覚ました男とその娘。
男は愛していた妻の死と裏切りの両方を知る事になる。きっと耐え難い苦しみが彼を待っているのだろう。
その横で涙を流す少女。彼女はまだ中学生だ。この現実を受け入れるのは難しいだろう。
「だが、アンタには出来るだろう?アタシがそう判断したんだから」
老婆はただただ祈った。
二人の明るい未来を。
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