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二日目
次の日の朝。といってももうすぐ昼になるのだが。
俺はふかふかのベッドの上で目を覚ました。羽毛布団を捲り上体を起こすと、黒い羽がいくつか舞った。
えーっと、そうだ。俺は今、記憶喪失で、帰る家がなくて、口の悪いお婆さんの家に泊めて貰ってるんだ。この部屋は婆さんの息子が使ってた寝室だとか言ってたな。確か、もう家を出て自立してるんだっけ。
回らない頭で昨日起きた事をポツポツと思い起こしていると、ベッドの正面にある真っ黒な扉がガチャリと開いた。
「おや、起きていたのかい」
「はい。おはようございます」
入って来たのはお婆さんだ。手には何か椀のようなものを持っていて、そこからは湯気が立っている。きっとあれが今日の朝食だろう。
「すみません、わざわざ……」
「何言ってるんだい。飯作ったくらいで大袈裟だね」
婆さんは相変わらずの態度で俺を突っぱねたが、俺は構わず一礼する。口では随分強気な事を言っているが、彼女はもうかなりの歳に見える。丸まった背中がその証拠だ。大の男一人を担げるくらいの力を持っていたとしても、老いは隠せない。
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