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お婆さんの答えはあまり参考にはならなかった。
それから暫くした頃。
食事を終えて食器を運ぼうと部屋を出ようとした時だった。
何処から、何かが割れる音がした。
大変だ、お婆さんが怪我をしたかもしれない。そう思い、俺は急いで部屋を出た。
すると今度は、人の声がしたのだ。
明らかにお婆さんとは違う、もっと若い女性の声だ。何か叫んでいるように聞こえる。
この家に俺以外の人がいたとは思ってもみなかった。お婆さん自身が一人暮らしだと名言した訳ではないが、今まで気配を感じなかったから。そもそも、昨日鏡を探した時に会わなかったし。
とはいえ、この家の広さを考えると納得がいく。豪邸でヨボヨボのお婆さんが一人暮らしなんて流石に浮世離れし過ぎだ。面倒を見てくれる人がいて安心した。
顔も知らない“もう一人”の存在に自分で勝手に納得しながら、食器を戻しに行く。本当は俺が洗うべきなのだろうが、高価そうな食器を割ってしまいそうで怖い。今だって、落とさないように気を付けなければ。
食器に集中しながらゆっくり歩いていると、また女性の叫び声が聞こえてきた。
「……のよ!!いい加減……してよ!」
断片的に聞こえた言葉と、その後にまた何かが割れる音。
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