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 「南条の遺体が発見された」出るなり建野が言った。  スピーカーにしたので、河村にも聞こえている。2人、顔を見合わせた。  「どこで発見されたと思う? 警察庁の庁舎の真ん前だ」  「そんなところで?」息を呑むひかり。隣で河村も大きく目を見開いていた。  「しかも、きっちりと、インドミト・メッセージを施されていたらしい」  「そんな馬鹿な。いったいどうやって?」  河村が顔を顰める。彼が疑問に思うのも無理はない。警察庁といえば霞ヶ関で日比谷公園のすぐ近く。他にも外務省や財務省、農水省などが立ち並ぶ官庁街だ。夜中であっても人の目は絶えないだろう。遺体を放置するだけでも無理だし、ましてやインドミト・メッセージだなんて……。  「本当だよ。で、馬鹿なヤツはどこにでもいるもので、南条がインドミト・メッセージで置かれている場面を写真で撮って、ネットにアップしている。拡散しているそうだ。見ようと思えばどこでも見られるよ。勧めないけど」   ひかりも絶対に見たいとは思わなかった。  更に建野が状況を説明してくれた。  警察庁前に、朝8時頃、タコス料理の移動販売車が停められた。警備の人間によると運転手は若い男で、何か急な連絡でもするかのようにスマホで話しながら、どこかに立ち去ったという。  官庁街であり、そのような移動販売はよく近辺で開業しており、特に昼食時にはたくさん現れる。朝の時間も昼ほどではないが、弁当などを売っていることがある。  その類いだと思った警備員は、しばらく待つことにした。だが、一時間経っても誰も戻ってこないので、さすがに不審に感じ、近隣の警察署に連絡。刑事達が調べようというその直前に、急に車が振動し後ろの荷台部分の外壁がすべて崩れ落ちた。むき出しとなった荷台に、テーブルとイス、そして、インドミト・メッセージを施された南条の遺体が置かれていた、ということだった。  「とんでもない挑発行為をされたわけだ、坂下は。次はおまえだ、と突きつけられたかたちだな。さすがに、冷静じゃいられないんじゃないか」  河村が言った。大きく息を吐いてから、また外の様子をうかがい見る。
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