232人が本棚に入れています
本棚に追加
/285ページ
今日は特別に暑いなあ。
誠は砂埃が舞う庭に出て、空を見上げた。昨日よりも一段と輝いている太陽。何だか、日本で見るより元気があるような気がした。
メキシコは北半球にあるため寒い時期も暑い時期もほぼ日本と同じだ、と聞いていた。地方によって違いはあるけど、このあたりはちょっとだけ後ろにずれる感じになるそうだ。
今は乾季で夏。日本より乾いた暑さだ。しかも、風が強く吹いていて、立っているだけで熱を帯びた砂埃がまとわりついてくる。
お日様がソンブレロをかぶっているイラストを思い描き、笑ってしまった。卒業したらメキシコに行かなきゃならないんだ、と小学校時代の友達に言ったときに、彼がメキシコのイメージとして描いた絵だ。あれからもう、半年以上経ってしまった。
いきなり背中に衝撃が来た。うわっと叫んで転がった。砂まみれになり、誠は慌てて立ち上がる。
「何すんだよ、姉さん」
白くなった髪の毛をはらい、砂を落としながら怒鳴った。
「スキあり、だよ。ぼうっとしてるからそうなるの。メキシコに来たら気を抜いたらだめだって、父さんも言ってたでしょ」
太陽に負けないくらい輝く笑顔で、二つ上の姉である菊乃が言った。
「それは、街の中を出歩くときのことだろ。ここは家の庭だぞ」
「どこにいてもスキがあったら攻撃するからね。それが訓練。ほらっ」
さらに菊乃が、足を高々と蹴り上げて、誠に砂を飛ばす。顔面にもろに浴びてしまった。
「うわっ。ぺっぺっ」と口の中に入った砂や小石をはき出す。
目を開くこともできなかった。
「キャハハッ」と心からうれしそうな菊乃の声。
「くそうっ」
ようやく姉の姿が見えるようになると、誠は飛びかかっていった。
だが、菊乃は余裕でよけると、側転、バク転、後方宙返り、とくり返して離れていく。
最初のコメントを投稿しよう!