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「何かいいの、撮れた?」
真剣にファインダーを覗き込んでいた彼女が小さく息をついたのを見計らって、声をかけた。
彼女が少し惚けたような顔でこちらを見る。寒さのためか、元々白い顔がますます白くなっていた。
写真部の活動で、せっかく雪が降っているのだからと外に出てみたのだが、風邪を引いては元も子もない。
「先輩。その、まだあんまり……」
「見てもいい?」
「あ、はい」
手渡されたデジカメのデータを見ていく。
雪化粧した花。寒さに身を寄せ合う雀。
少々いびつな雪だるまたちが仲良く一列に並んでいる写真には、思わず笑みがこぼれた。
「これ、面白いな」
「それはさっき公園で見つけて、とても可愛らしかったので……。でも、コンテスト向きではないですね……」
「そんなことないって。何が通るかわかんないんだから、好きに撮ればいいよ」
そう言うと、彼女がはにかんだように笑った。
「先輩は、何かいいの撮れましたか?」
「え? ……うん、まあ」
「どんな感じですか? 見たいです」
「……恥ずかしいから、あとでね」
「えっ、先輩、ずるいです!」
「いい加減寒いし、そろそろ戻るかー」
「先輩!」
ごまかしながら歩き出す。
彼女が小走りで追いかけてくる、雪を踏むサクサクという足音が聞こえた。
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