#4 約束

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 それでも震える唇で、愛しい人の名前を呼ぶ。 「そうだ。これからはそう呼べ」  確かにこんな時に「中将殿」は色気がないかもしれない。だが、彼は私よりはるかに年上の男性だ。その彼を名前で呼ぶことにためらいを覚えたが、それより何より、特別な絆を自覚させる陶酔のほうが大きかった。  だが中将はそこで許してはくれなかった。 「そのあとに続けろ。『愛してる』と」 「ええっ!?」  羞恥に跳ね上がった心臓を鷲づかみにされるほど驚き、私の顔がますます火照る。 「だって中将殿、それって……!」 「中将殿、ではないだろう? 将希」  罰だ、と首筋を痛いくらいに吸い付かれ、また痕跡を刻まれる。 「あ……いたっ……!」 「教えただろう? 『伴行さん、愛してる』だ。言え、将希」  絶対に抗えない彼の愛の麻薬は、私を完全に支配した。調教じみた扱いで、心が裸にされていく。  たったこれだけを言うのに、私はどれだけの勇気を持たねばならないのだろう。嬉しいやら恥ずかしいやらで、穴があったら入りたいくらいだ。 「言えないか? 言えないなら、俺に抱かれたとまわりにわかるように、目立つところに痕を刻むぞ?」  いいのか?と意地悪く笑う中将には勝てない。恋は惚れた者の負けだ。     
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