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悔しくなって私は拗ねたふりして口を尖らせた。
「それは……上官命令でありますか」
「いいや?」
中将がニヤリと笑う。
「おまえを誰よりも愛しく想う恋人の願望だ」
――恋人。その響きに胸の奥がきゅうっと締まる。
でもそれは、今までに感じた切ない痛みではない。さくらんぼのように甘酸っぱい、初恋のときめきだ。
そしてこんな駆け引きすら、やはり中将のほうが一枚上手だと思い知る。
私は彼の瞳、その奥をまっすぐに見つめる。
彼の心の奥底まで、私の想いが届くように、ありったけの勇気を出して彼に伝える。
「伴行さん……愛してる」
「将希…!」
強く私を抱きしめながら、何度も私の名前を呼ぶ中将の低くかすれた声が耳をくすぐる。
それだけで私の身体は彼だけのために色づいていき、彼の手でひとつ、またひとつと真紅の徴が増えていく。
「ああっ……伴行さん、愛してる……愛してる……!」
中将が触れたその痕跡は、彼だけのものである証。そして、全身をぞわりと駆け抜ける甘美な電流に私は身体をくねらせ、初めての快楽に溺れていた。
「ん、はあっ……、あ、んっ……!」
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