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空も海も敵の手に落ちた。この戦いは短期決戦だと言われた私たちに、友軍からの補給はなかった。
武器や食べ物はすべて現地調達せざるをえなかった。飢えに苦しむ私たちは、もはや敵ではなく、己との戦いになっていた。
雨水で喉を潤し、食えるものはなんでも食った。虫でもトカゲでも。見たことのない植物などにも手を出した。腹が満たせればなんでもよかった。
何日もジャングルを彷徨い、私はついに体力の限界を超えて倒れた。ひとりの仲間が私に気付いて一度足を止めて振り返ったが、彼らは生気のない瞳で私を見ると、そのまま立ち去っていく。
取り残される。こんな場所で取り残される。敵も倒せないまま、こんな場所で私は野垂れ死んでしまうのか。
「待って……!」
私は怖気立ち、離れて行く彼らに向かって手を伸ばした。
「置いて……行かないで……!」
ふと、ぞわりと身体を駆け抜けた強烈な寒気。呼吸が苦しくて、周囲の音が遠くなる代わりに、静かに降る雨にも似た、血の流れる音が頭の中に響く。
私の体はどうなっているのだろうか。もう一歩も動けないのに、まだ私の身体は命の鼓動を刻んでいる。
身体がずっしりと重い。もう指一本すら動かせない。呼吸が浅くなり、気力も体力もすでに限界を超えていた。
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