#5 虚しき願い

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 実際、情事のだるさが腰に残る程度で、気分は驚くほどさっぱりとしていた。  今なら歩ける。 「早く海まで出て、本隊と合流しましょう」  本隊と合流すれば、少なくとも今よりはいい道が開かれるはずだ。 「そうだな。とにかく歩くか。だがおまえに無理はさせない。少しでも具合が悪そうなら、遠慮なくおぶわせてもらう。これは上官命令だからな」  なんとも素敵で甘い上官命令だ。 「はい、伴行さんには逆らいません」  しおらしい私の態度に、中将は「よし」というと、私の頭を抱きこんで、唇を奪った。 「栄養剤だ。続きはまた今夜な」  私たちは顔を見合わせて、互いに笑みを零す。 「よし、行くぞ」  雨の中を私たちは歩き始めた。  私は中将の一方後ろを、手を引かれて歩いている。繋いだ手のぬくもりが、昨日よりも嬉しい。  食料も水もないような場所で死ぬしかないと思っていた、昨日までの絶望はどこかに吹き飛んでいた。  やがて雨は徐々に弱くなり、雲の隙間から青空が見え始めた。  雨上がりの晴天は最悪だ。じめじめして気分が悪くなる。早くこの密林から海へ出たい。  中将もそう思ったのか、私たちの歩みが若干速くなる。  やがて視界が開け、向かい風に汐の香を感じた。  海だ。そばに海がある。目的地はすぐだ。 「伴行さん……」     
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