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だから、いつだってさよならが出来るように。その瞬間を逃さないように。カメラを持ち出してみたのだけれど。それは杞憂だった。
私が古い世界に閉じ込められても、助けると言ってくれる人がいる。それだけで良かったんだ。
A「……でも、ありがとう」
私は瞳の奥でシャッターを切った。去りゆく今を忘れないように。
ーー3、2、1。
ぱちり。
ぎゅっと目をつむり、閉じた瞼をゆっくりと広げる。凍りかけた睫毛が陽光を受け、眩しそうに瞬いた。
いつもより辺りが明るく見える。
大丈夫。新しい世界は、そんなに悪くない。
私は真白の向こう側にそっと笑顔を向けた。
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