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この男を前にすると、上手く言葉が纏まらなくなる。今までイジメられてきた恐怖からか、唇が震えて、自然と声がか細くなってしまう。
だが……それも今日までだ。このクズを、今から地獄に堕とす。
「はん、いいぜ。貰っといてやるよ」
「う、うん……中身も、確認してほしい……」
僕がそう言うと、それが罠とも知らぬクズは、言われた通り茶色い封筒を受け取り、中身を確認し始めた。そして、お金の中に混じったチケットを手に取り……怪訝そうな顔をした。
「あ? こりゃなんだよ、安藤」
「……それ? それは、チケットだよ」
「だから、何のチケットだって聞いたんだよ。脳みそついてんのか?」
機嫌を悪くしたそのクズを……僕は心の底から哀れんだ。
ああ、受け取った! このクズは、僕から、地獄行きのチケットを受け取ったんだ!
じゃあ、もう……何も怖くない。
「……うるせえよ、クズ」
「……あぁ?」
震えながらの罵倒。初めての反抗。クズは一目見て分かるほどにブチ切れていた。
立ち上がって、クズの鞄を、クズに向かって投げ付けた。ドスンとぶつかって、それは、そのまま地面に落ちた。
「クズって、言ったんだよ。脳みそついてるのか?」
「てっめぇ……ぶっ殺すぞ、安藤」
「やってみろよ、クズ」
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