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しばらくして貴方と初めて出掛けました。世間一般的にデートと呼ばれるもので、貴方をがっかりさせたくなくて精一杯お洒落をしました。夜遅くまでどの服がいいかと考えていたので疲れていましたが、貴方が「可愛いね」と言ってくれたことで疲労がまるで最初から無かったかのように吹き飛んだこともありました。
貴方はとても優しい人でした。気づけば決まって歩道の車道側を歩いてくれていましたね。いつの間にかお洒落なレストランを予約していて、レストランの奥側に座ることを促してくれたことも、大人となった今に貴方の優しさに気づくばかりです。
デートの帰り、天候は雨。貴方が持参していた折り畳み傘に入れてもらいました。家まで送ってもらうまで小さな折り畳み傘でも窮屈に感じなかったのは、貴方の肩が雨に濡れていたことで納得しました。
貴方の優しさに、泣きそうになる日々でした。貴方は私に尽くしてくれているのに、私は貴方に何もできないまま時は過ぎましたね。
ある日、貴方と大喧嘩をしたことがありましたね。今思えば、貴方と喧嘩したのはあれが最初で最後かもしれません。貴方が艶のある長い黒髪に綺麗な顔立ちをしている後輩の女の子に言い寄られているのを見て、私は自分勝手に疎んでいました。
私は酷く嫉妬深くて独占欲の強く、嫌な女でした。学校中に人気のある貴方のことです。女の子に話しかけられることも多々あって、その度に私は不満に思いながらも胸に秘めていました。
やがて器から溢れるように積み重なり、壊れてしまったのは貴方が後輩の女の子に告白されているのを見てしまった時でした。貴方から送られてくる数々のメッセージを無視し、声をかけてくれた貴方を突き放してしまう日々でした。
私はバイトに明け暮れていました。それは思い浮かんでくる貴方の顔を思い出したくないが為で、貴方を遠ざけてしまいました。
一人でいると、貴方のことばかり考えてしまうのです。貴方のことばかり、思ってしまうのです。貴方と一緒にいると眠くなってしまう理由を考えたり、貴方がなんで私を好きになってくれたのか、と考える日々でもありました。
前者は貴方といると安心してしまうからで、後者の答えは未だに分かりません。
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