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彼女「なに?パパとママが見えるの?見えるのでしょ?私の事、私の・・・ほら、だって、毎日、同じ時間に、ユウを迎えに行ってここを通るよ。だから、私・・・パパが大事にしていた、カメラで、私をたくさん撮って、ユウをたくさん撮って・・・だから、今度は、私が、パパとママとユウをたくさん撮ってあげることにしたの・・・なんで、なんで、なんで、ねぇパパとママとユウが見えるのでしょ?教えて、どこに居るの?ねぇ?教えてよ!!」
掴まれた彼女の手を振りほどく事ができなかった。
真っ直ぐに僕を見る目に、涙が流れてきていない目に、何を言っていいのかわからない。
彼女が撮影し続けたのは、ガードレールでもカーブミラーでも無かった。
飲酒運転の車にはねられて、死んだ大切な人の写真を撮影していたのだ。
4ヶ月前に、19歳の男が、飲酒運転の挙げ句に、父親と母親と一緒に居た子供を巻き込んで、ガードレールに激突した。
運転していた男は、車を乗り捨てて逃走した。車の中には、男が飲んだと思われるサワーの空き缶が多数転がっていた。その後、少し先で倒れて動けなくなっている所を警察に捕まった。
彼女は、僕が答えを持っていない事を悟ると、何も言わないで、カメラをガードレールに向けて構えてから、ニッコリと笑ってからシャッターを切った。
そして、彼女は明日も撮影に来るだろう。
家族が最後に居た場所を、家族を失った場所を、1人になってしまった場所を撮影するために・・・。
涙を流さないで、僕を問い詰める彼女に、僕は告げる言葉が用意できない。彼女は、これからも1人で撮影を続けるのだろう。僕は、彼女に何ができるのだろうか?
今度、僕は彼女に告げてみる
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