守るために

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テリオスは崖と太陽を背に剣を抜きハワードを待つ。妻に娘を預け、決して私の味方をするなと言い含めた。 まもなくハワードとその部下が現れてテリオスを取り囲んだ。 「剣を捨てろテリオス!抵抗すれば命はないぞ!」 迷いのない目だった。軍人として覚悟を決めてきたのだろう。 「私は諦めるわけにはいかない。断る!」 ハワードが合図をして兵士がテリオスに襲い掛かる。 一人目の腕を裂き、二人目の剣を弾き飛ばし、三人目の肩を突いて撃退する。 「もういい。私がやる」 ハワードが剣を抜いた。剣と剣がぶつかりあう。 お互いがお互いの剣を知り尽くした仲。決着はなかなかつかない。 「テリオス!これ以上抵抗して何になる!わかっているはずだ!」 「ああ、わかっているさ!」 テリオスは楽しんでいた。人生最後のハワードとの決闘を。ハワードと剣を交えるのは何度目になるだろう。わが友ハワード。本当に楽しかった。 だがそれもこれが最後だ。 強く剣を弾きハワードを下がらせる。 テリオスは剣先をハワードに向け言い放った。 「私の剣の腕は見ての通りだ!死ぬまでにお前の部下を10人は切り捨てるだろう!そこで提案だ!妻子の身を保証するなら私は剣を捨てる!どうだ!」 ハワードは周囲を見渡し部下の狼狽えぶりを確かめると答えた。 「提案を飲もう!剣を捨てよ!」 「この場は収めてものちに他の貴族たちが妻子に危害を加えるかもしれない。何をもって証とする!」 ハワードは短剣を抜き、己のこめかみから頬までを切り裂き答えた。鮮血がハワードの頬を染める。 「この傷をもって証とする。約束を守ればこの傷は友との約束を守った誇りとなり、破れば卑怯者の恥辱となろう」 テリオスはハワードの目をみた。いつもと変わらぬまっすぐで力強い瞳。 テリオスは地に剣を刺し言った。 「あとは頼んだぞ。」 ハワードがうなずくのを見てゆっくりと崖の端まで後退った。 妻子の顔を確かめるとテリオスは背中から崖に身を投げた。 最後に空が見えた。 ――ああ、なんて青い。 友との思い出と空の青さがテリオスに死の恐怖を忘れさせた。
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