第2章 幼き日

5/7
前へ
/220ページ
次へ
慌てた様子で教室に入ってきたのは、髪の寂しさを隠しきれていない、年配の先生らしき人だった。 「鈴木凌太くんいるかな」 その名前が僕を指すものだと認識し、右手をあげる。 「お母さんの容態が・・・」 年配の先生の話が、右の耳から左の耳へと流れていく。 頭が考えることを放棄し、思考がまとまらない。 文字通り真っ白になっていた。 年配の先生に促され、席を立ち上がる。 そんな僕を見るクラスの目は、どこか冷たく感じた。 さきほど紙が回ってきた生徒に関しては、なにやら続きを書いている。 よっぽど大切な内容なのだろうか。 グラウンドのカラスは、いつ間にかいなくなっていた。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加