第3章 運命の日

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真っ暗な台所に、電子レンジの時計表示が浮かび上がる。 手探りでスイッチの場所を当て、電気を点ける。 姿を現した冷蔵庫には、無数の付箋が貼られていた。 この付箋らに除霊効果などはない。 付箋の正体は、極端に記憶力が悪い父が残したメモであった。 明日の予定からゴミ出しの曜日まで。様々な種類のメモが書かれている。 冷蔵庫を開けて飲み物を探すが、お茶やコーヒーにビールと、これといったものが見つからない。 「これで我慢するか・・・」 僕が手に取ったのは飲みかけのコーラだった。 ペットボトルのラベルの少し下あたりまでしか入っていないコーラ。 炭酸は抜けきっているが、キンキンに冷えている。 乾ききった喉を潤すため、勢いよく飲む。 駄菓子を混ぜて作ったような、独特な甘みが口いっぱいに広がった。
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