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第1章 現状
「すーはあ・・・」
教室のドアの前で、深呼吸とため息の間のようなものを繰り返す。
心を落ち着かせるための行為だが、僕が転校生というわけではない。
かといって、クラス替えがあったとか、誰かと喧嘩して気まずいだとか、そういったこともない。
僕が教室に入るのに躊躇している理由は、廊下側の一番後ろの席。つまりは僕の席に、数人の女子生徒が群がっているからだ。
僕はこれから教室に入り、女子生徒の皆さんに「そこをどいてくれ」と、伝えなければならない。
いつもならトイレの個室に向かい、ホームルームの時間まで時間を潰すところだが、今日は机の中に入れたままにしていた宿題を終われせなければいけないのだ。
「すーーーっ・・はぁ・・・・・」
最後に大きく、ため息交じりの深呼吸をし、教室のドアを開く。
平静を装い、ゆっくりと自分の席に向かっていると、女子生徒の一人が僕に気づき、なにやらコソコソと話し始めた。
会話はすぐに終わり、数人の女子生徒が違う席に移動を開始する。
「助かった」と胸を撫で下ろし、席に着く。
ほんのり残った椅子の温もりを少しだけ意識しつつ。僕は机の中からノートを取り出すと、早速宿題に取り掛かった。
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