第3章 運命の日

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窓際の一番後ろの席。 今まで何度か席替えが行われてきたが、小川結衣の席は毎回そこだった。 窓際の一番後ろといえば、一般的には競争率の高い席である。 しかし、僕らのクラスでは、誰が言い始めたのか『デスシート』と呼ばれていた。 なんでも、その席に座ると不幸になるそうだ。 そして今、僕の視線の先でその席に座る小川結衣はというと。 「・・・・・寝てるな」 体を机に預け、窓の方を向いて眠っていた。 「スースー」と、静かな寝息が聞こえてくる。 僕は起こさないように、椅子をそっと引き自分の席に座った。 特にすることもなく、時計の秒針を目で追っていると。 「・・・ん」 吐息と共に、寝返りを打った彼女がこちらを向いた。 僕はこの時の光景を一生忘れないだろう。 そこにいたのは、いつもの姿からは想像できない。 可愛らしい1人の女の子だった。
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