第4章 約束

3/9
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/220ページ
「おはよう」 教室の端と端。五席離れたその距離は、僕らの心の距離を表しているようだった。 「・・・・おはよう」 本から目を離し、僕の方をちらりと見て挨拶すると、その視線はすぐに本の方に戻ってしまった。 僕は自分の席に鞄を置くと、彼女の方へ歩み寄ってこう言った。 「どんな本読んでるの?」 読書中に話しかけるのはどうかと思ったが、趣味は共有したくなるものだ。 それが、小川結衣にも通用するのかは定かでないが、試す価値は十分にあると判断した。 「・・・これ」 彼女は小説の表紙を見せてきた。 それは僕でも聞いたことのある有名な小説で、確か高校生の恋物語だったはずだ。 意外なチョイスに少し驚きつつ、さらに尋ねる。 「どんな話なの?」 彼女は指を口に当てて、少し考える素振りを見せてから、こう続けた。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!