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「おはよう」
教室の端と端。五席離れたその距離は、僕らの心の距離を表しているようだった。
「・・・・おはよう」
本から目を離し、僕の方をちらりと見て挨拶すると、その視線はすぐに本の方に戻ってしまった。
僕は自分の席に鞄を置くと、彼女の方へ歩み寄ってこう言った。
「どんな本読んでるの?」
読書中に話しかけるのはどうかと思ったが、趣味は共有したくなるものだ。
それが、小川結衣にも通用するのかは定かでないが、試す価値は十分にあると判断した。
「・・・これ」
彼女は小説の表紙を見せてきた。
それは僕でも聞いたことのある有名な小説で、確か高校生の恋物語だったはずだ。
意外なチョイスに少し驚きつつ、さらに尋ねる。
「どんな話なの?」
彼女は指を口に当てて、少し考える素振りを見せてから、こう続けた。
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