第1章 現状

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帰り道、僕はあることを考えていた。 小川結衣についてだ。 彼女はいわゆる『いじめ』を受けている。 そんなことは、みんなが知っていて、心配もしている。 それでも助けようとしないのは、自分が次の標的になることを恐れているからだ。 自分を犠牲にしてまで、誰かを助けようとする。そんなアニメの主人公みたいな人は、そういるものではない。 そういないからこそ、主人公になりうるのである。 もしも、彼女がいなかったら。いじめの矛先は、きっと僕に向いていただろう。 友達はいないし、これといった趣味や特技があるわけでもない。 外見もパッとせず、勉強も運動も中の下。 こんな僕が平穏な学校生活を送れているのは、ある意味彼女のおかげかもしれない。 こんなことを考えてしまう自分が、僕はたまらなく嫌いだった。
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