第2章 幼き日

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「あー、また揃ってないじゃん」 少年の後ろでバラバラに置かれた靴を見て、母が口を尖らせる。 「しまった」と、落書きをしたのが見つかった時のように、少年は舌をだした。 「靴は二人でひとつだから、どちらか片方だけだとものすごく寂しいんだよ。凌太も家族の誰かがいなくなったら寂しいでしょ。」 少年は小さい頭で考えた。家族の誰かがいなくなる。 少年は、お父さんもお母さんも大好きだったので、考えるだけで胸が苦しくなった。 「だから、毎回きっちりと揃えるんだよ」 そう言うと、母は少年の小さな靴をこちら側に向け、かかとを揃えて並べた。 「それに、この方が出かける時に履きやすいでしょ」 母の言葉の半分くらいを小さな頭で理解して、少年は頷いてみせた。
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