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それにしてもおかしい。
こんな時間に幕張がいる訳がないのである。
だいたい、深夜と呼ばれる時間は営業所の規模によるけれど、運行管理者が一人――なんてざらだ。
俺の今いる営業所も小規模だし、勤務しているのは全員で――運転士、事務員を含めて百人もいないだろう。
故にこんな時間に運転士ならまだしも、事務員がいるのは普通におかしい。
そもそも、今日は彼女の公休日であるはず。
それに今日は月曜でなおさら何かがあるわけでもない。
じゃあ、なんでいるのん?
「なあ、幕張」
「なんですか、先輩」
俺が声をかけると幕張はにらめっこしていたパソコンの画面から視線をはずして、少し不機嫌そうに俺の方へと視線を向けた。
「今日って確か幕張の公休日だろ? なんでこんな早朝っていうか深夜と呼ばれる時間から営業所にいるんだ? そんなに公休でやることがないのか?」
「…………」
そう訊ねると俺の可愛い可愛い後輩ちゃんは。
無言で背筋が凍りそうになるほど冷酷な視線を俺の方へと向けて。
わざとらしく大きく――それはそれは大きく嘆息をした。
ヤバイ、これは地雷を踏んだか――と俺は死を覚悟して真っ白な天井を見つめる。
「――誰のせいでこんなことになったと思ってるんですか!?」
彼女はぶちギレた声は、深夜の俺たち以外誰もいない営業所中に響き渡るのだった。
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