5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえ、マスクをした女の子がかわいく見える理由を知っている?」
「いや……」
「人の脳は、見えない部分を勝手に補うようにできているんですって。それも、理想的な形に」
「マスクで覆われた部分に、自分にとっての理想の顔を見てしまう、ということ?」
「たぶん。……わたしが『彼女』を美しいと思うのも、そういうことなのかしらね?」
そう言うと、彼女はカメラを構え直して前を向いた。彼女の視線の先には、完璧ともいえる、均整の取れたボディの持ち主がいる。
ニットワンピースに包まれた胸はふわりとまるく、腰は折れそうなほどに細い。子鹿のような長い手足は雪の上に無造作に投げされ、そして。
本来頭部があるべき場所には何もなく、そこには鮮やかな赤が広がっていた。
最初のコメントを投稿しよう!