はては縁を結びける

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 朝起きて、歯磨きをして、顔を洗って。鏡に映った自分の髪は短く、理想とは程遠かったけれど、それでも跳ねた毛先のように心はどこか踊っていた。  それは欲しかった本がギリギリのところで買えたからかもしれないし、気になっている人と連絡先を交換出来たからかもしれない。はたまた、喫茶店の主人が作った季節のフルーツケーキが美味しかったからか。  小さな幸せが積み重なっていくのを感じて、ふともう一度美容院に行ってみようかと思った。嫌な事があったらその時はもう一度、なんて余程の自信がなければ言えないはずだ。 (わざわざ違う髪型にしたのも気になるし)  最近通い始めた喫茶店を通って、交差点を二つ真っ直ぐに。右手に見える小さな文房具屋の隣が美容院。の、はずだった。 「あれ?」  そこには三階建てのアパートが建っているだけで、美容院らしきものはない。一階の手前にある部屋は居住用というよりかはオフィスに使うような造りをしているが、大きな窓ガラスの向こうにはテナント募集中の看板が立ててあるだけだ。
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