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 一度折れ目の付いた紙は、二度と戻ることはない。  それは誰の言葉だっただろう。どれだけ手を加えて“それ”が薄くなったとしても、見えなくなったとしても、決して消えることはないというのは。  なにも戻らなくなるものは紙だけじゃない。ありとあらゆるもの、森羅万象でそういうことは起こり得る。折り目の話でも、紙よりも金属の方が顕著に表れるだろう。覆水盆に返らず、まさにこのことだ。そして……紙にしみ込んだ色も、同じこと。  僕はそれを、恐れていたのだろうか。  だからこそ、やり直しのきく油絵の道を選んだのだろうか。
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