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 油絵具を掬い取っては、キャンパスの上で重ねていく。  絵を描くのは好きだ。幼い頃から何かに没頭することが好きだったが、その中でも特に、絵を描くことが好きだった。だからこそ、美術学校で絵を学ぼうとしたのだが――僕は卒業を待つことなく学び舎を去った。 『――君の絵は、まだ“生きて”いない』  時間も無い中でなんとか覚えたイタリア語だったが、唯一はっきりと記憶に残っているのがそれだった。絵が、生きて、いない。その時から今まで、何度も、何度も、何度もその言葉を反芻してきた。生きるとは何だ。活き活きとした、躍動感が足りないということだろうか。いくら技法を覚えたところで、その評価が覆ることは無かった。  たしかに動物の絵は得意ではない。そもそも好きではないのかもしれないが、あまり描きたいという意欲が湧かない。分からないままに模索し続け、がむしゃらに描き続けてきた結果――自分の中の一切に“成長の兆し”というものを感じることができなくなった。僕は学校へ、自分の方から退学を申し出たのだった。
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