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第一話 プロローグ
その日は寒くなりつつある日だった。
腕の中で赤ん坊がにこにこと笑顔を向けてくる。
「いいこね。もうすぐよ」
銀髪に深紫の瞳の女性は赤ん坊をあやすように、話しかける。腕の中の赤ん坊も同じく銀髪に深紫の瞳だ。
赤ん坊は知らない、この先この母親と別れなければいけないことを。
孤児院が見えて来る。あそこに行けば、赤ん坊の行く末がどうなるか分かっていた。
それでも尚、母親はこの孤児院に託すことにした。
孤児院に付くと、暖かな毛布で包んだ赤ん坊を、その前にそっと置いた。
「お母さんはいつでもあなたを見ている。きっといつかまた会えるわ……」
悲痛な面持ちで母親は声をかける。やがて、その時が訪れると、かき消えるように姿が見えなくなった。
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