初めてのVR

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初めてのVR

「先輩。どうしたんですか? その格好」 明日香は、隣に立つ男の姿を上から下までまじまじと見つめ、大きくため息をついた。 『先輩』と呼ばれたその男は、海パン一枚。頭には一昔前のVR機を装着している。 明日香が装着しているのは、先月発売されたばかりの新型。世界初の眼鏡タイプだ。 持ち運びも便利なので、いつでもどこでも、手軽に仮想世界を楽しめるのだ。 「お前こそ、その格好で、何撮るんだよ?」 二人は写真部。 今日は、仮想空間での写真撮影に挑戦している。 男が装着しているVR機は、明日香のお下がり。この日、初めて仮想世界を体験するらしい。 「私ですか? 私はエベレスト山頂から見下ろした景色を収めようと思って。先輩は……聞かなくてもわかりますが……」 「俺? 俺はもちろん、ビーチでギャルを……」 初めてのVR体験に、男はかなり浮き足立っている。 「先輩……。それ、犯罪ですから」 意気揚々とカメラを構える、海パン一枚の男の姿に、明日香はもう一度、深いため息をついた。
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