今は昔の語りモノ

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――内なる声に響きあい 硬い蕾みを綻ばす ――黄昏時に染まる身体は満ち足りて ――命が囁き溢さぬ唄へ 果て無き陽射しが目覚めくる……  丘を滑る風になり、小麦畑を駆け向ける。黄金原を染めていく、最後に燃え上がる炎のように赤い空へ飛び立てば、背後の夜に名残りの朱色が架かっている。たとえ闇に追いつかれても、ささやかな星を仰ぎ足を休めればまた、太陽の目覚めに立ち会えるだろう。  目蓋を上げれば、傍らの燭台の炎は荒々しさを削がれ、穏やかさを取り戻している。その暖かな揺らめきを欲し、そっと指先を伸ばす。触れられないと知りながらも求めた手を、軟く、炎の舌が舐める。決して害意をなさない魔力で生じた炎は肉体をすり抜け、確かな温度だけを残していった。  ふと顔を上げると、祈りを囁く語り部と正面から視線が絡み合う。  彼女の目が優しく細められ穏やかに笑いかけられると、魔法を珍しがるさまを見られたことに羞恥がこみ上げた。いまだ紡がれ続ける言の葉に聞き惚れ瞑目する村人たちを見回し、炎にかざした腕を引き戻す。誰に咎められたわけでもないというのに。     
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